今は学校に行けていないけど大学に行きたい、そう考えた時に取れる選択肢の一つに「高認」があります。
高校を卒業しなくても大学を受験することができる高認。実は他にもできることがあります。
私自身、高校時代は不登校で最終的には高校を中退しました。
ですが、将来への不安と学びたい分野があったことから、大学進学を諦めることができませんでした。
私は通信制高校に通うことを選びましたが、高認を取るか通信に行くかで悩んでいました。
今回は、私が当時知りたいと思った高認について、詳しく説明していきます。
かつての私と同じように悩んでいる人の役に立つと嬉しいです。
この記事は今春(2023年)、通信制高校を卒業したライターさんに同世代の子どもたちに向けて執筆して頂きました。
【追記】
2024年、実際に娘が受験することになったので、その時に知った情報も加筆していきます。
わずらいかかり(ペンネーム)さん
偏差値70近い進学校に通っていたが精神的な不調がきっかけで不登校になり、通信制高校に転学。
執筆した小説が新聞に掲載された経験を持つ。
歌集の出版を目指しライター、イラストレーターとして活動中。
当サイトでは高認取得の体験談も紹介しています
高等学校卒業程度認定試験(高認)とは?
正式名称は、「高等学校卒業程度認定試験」です。
略して「高認」「高認資格」「高認試験」「高卒認定」「高卒認定試験」と呼ばれています。
(以下、当記事では高認と記載します)
Wikipedia(ウィキペディア)では下記のように説明されています
高等学校卒業程度認定試験は、高等学校を卒業していない者などに対し、高等学校を卒業した者と「同等以上の学力」を認定する学力試験。
引用元:Wikipedia
略称は高卒認定試験、高認試験、高認。文部科学省が実施している国家試験の一種である。
簡単に言うと、高認とは「高校を卒業していなくても高卒者と同じ程度の学力があると国に証明してもらえる国家資格」のことです。
2004年度までは「大検(大学入学資格検定)」と呼ばれていました。
高認取得でできること(メリット)
高認を取得してできることは「大学受験」だけではありません。いくつか紹介します。
大学や短大、専門学校を受験する資格が得られる
多くの大学は受験資格として高校を卒業していることを挙げています。
ですが、なんらかの理由があって高校に通えなかった場合でも、高認を取れば高校卒業者と同様の進路選択機会を得ることができます。
高校に通わずに自宅で学習して高認を取り東大を受ける、なんてこともできるわけです。
高卒者と同程度の学力があると公的に認められる
高認は国家資格なので、高認試験に合格することで個人の学力が公的に認定されます。
高認合格者は高校卒業者と同等の学力を証明することができます。
高認に合格すると、多くの国家資格や採用試験において高校卒業者と同等とみなされます。
高認合格で受験できる資格の一例
- 幼稚園教員資格
- 小学校教員資格
- 防衛大学校学生採用試験
- 衛生管理士
- 食品衛生管理者
※文科省のホームページに詳しく記載されているのでチェックしてみてください。
高等学校卒業程度認定試験の合格を高等学校卒業と同等とみなしている採用試験、国家資格一覧
時々聞かれる意味がないと言うのは、進学しなければ意味がないという意味ですね。
この点をデメリットとも言われていますが、将来の選択肢が広がりますし、価値がある資格です。
飛び入学の例外措置
年齢が満17歳以上で高認の必要な科目全てに合格し、大学が特に優れた資質を認めた場合、高認合格者には教育上の例外措置として大学入学資格、いわゆる「飛び入学」が認められます。
この例外措置は千葉大学や京都大学医学部、東京藝術大学音楽学部など限られた大学でのみ行われています。
この例外措置は現在大学を受験する時にのみ認められ、専門学校では行われていません。
海外の大学の受験資格
日本国内では大学受験は通常18歳になるまで認められていませんが、高認に合格することで、海外の大学受験が可能となります。
筆者の知り合いにも高2で中退して高認を受け、海外の大学に留学した人がいます。
中学生の時に娘が通っていた塾に、高校で不登校、高認を目指して勉強している子がいました。取得後、留学しましたよ。
当サイトでは高認取得の体験談も紹介しています
いくつから受けれるの?受験資格について
高認を受験するにはどのような条件が必要なのでしょう?
高認を受験するためには、受験年度の終了までに満16歳である必要があります。
試験内容(2023年と2024年変更後)
ここからは試験内容について詳しく説明します。
(2024年から変更があるので、最新の情報を確認してください)
高認の受験科目は多岐にわたり、試験内容も幅広いです。
以下は令和5年度(2023年)の科目と試験内容の概要です。
科目 | 試験内容 |
国語 | 国語 |
地理 歴史 | 世界史A、世界史Bの2科目から1科目を選択。 日本史A、日本史B、地理A、地理Bの4科目から1科目の計2科目を選択。 |
公民 | 「現代社会」1科目、「倫理」及び「政治・経済」の2科目のいずれかを選択。 |
数学 | 数学 |
理科 | 「科学と人間生活」の1科目を選択。 「生物基礎」「化学基礎」「物理基礎」「地学基礎」から1科目を選択。 または「生物基礎」「化学基礎」「物理基礎」「地学基礎」から3科目のいずれかを選択。 |
英語 | 英語 |
令和6年度(2024年)の第1回から、下記のように一部変更
令和5年度(2023年)まで | 令和6年度(2024年)から |
地理A、地理B | 地理 |
世界史A、世界史B 日本史A、日本史B | 歴史 |
現代社会、倫理、政治・経済 | 公共 |
試験会場は各都道府県に1会場ずつあります。
各科目は50分間でマークシート(選択式)。最高得点は100点です。
合格するには4割ほど得点する必要があると言われています。
全科目を1回で合格する必要はありません。
合格した科目は次回に繰り越すことができるので、自分のペースで挑戦することができますよ。
科目の振り替えと免除(科目履修制度)について
高認では受験の際、特定の科目を免除することがあります。
具体的には下記の場合です。
- 高校で単位を習得している
- 以前に高認試験を受け合格している
- 特定の資格を持っている
※免除される科目や条件の詳細は、高認の公式サイトから最新の情報を確認してください。
参考:文部科学省 高等学校卒業程度認定試験 免除条件
高校の単位の振替についてですが、科目履修制度と言われています。
例えば、通信制高校の場合、苦手な科目はレポートとスクーリングでとるほうが楽です。
なお、高校を中退した場合でも、在籍校の単位を振り返ることは可能です。
単位修得証明書を発行してもらいます。
学籍の記録は、保管期間が20年と言われています。退学後20年までが期限ということですね。
もし、学校が廃校になった場合は教育委員会に問い合わせをしてください。
通信制高校も対象です。
公式サイトで触れている高校もあります。
上記はNHK学園高等学校の例です。
高認で合格した科目の修得単位としての認定。
(振替については、下記でもう少し詳しく説明しています)
その逆で、高認の科目受験免除についても触れています。
高校の単位に置き換えることはできる?
高認で合格した科目は高校の単位に置き換えることができます。
娘の通信制高校の先生に相談したことがあります。
単位が足りない場合、この振替を利用して卒業することが可能になる場合もあります(条件等の確認が必要です)
出願手続きについて
高認を受けるには出願する必要があります。
ここではその手続きのためのステップを簡単に説明します。
※実際に受験する場合は必ず自分で公式サイトをチェックしてください。
参考:文部科学省 高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)
インターネット、携帯・スマホから申し込みができ、郵送で受け取ります。
受験案内と出願書類が一緒になっています。
※文部科学省のホームページにテレメール資料請求受付サイトが記載されています。
(3日程度で届きます。送料は到着後に決済)
- 受験願書、履歴書
- 受験料(収入印紙)
- 写真2枚(縦4cm×横3cmの上半身)
- 住民票または戸籍抄本(本籍地の記載があるもの)
- 単位修得証明書(免除する場合)
- 特例措置の申請書(希望する場合)
※受験料は科目数によって異なります。
1~3科目4,500円、4~6科目6,500円、7~10科目8,500円
収入印紙は郵便局、法務局、コンビニで購入できます。
娘の時は、郵便局で購入しました。
写真は自宅でスマホのアプリ、プリンターを使いました。
出願前6か月以内に撮影。 白黒・カラーどちらでも可。
帽子・サングラス・マスクは不可。
裏面に氏名、受験地(都道府県名)をボールペンで記入し、写真貼付欄に貼付。
身体上の障害等により、受験の際に特別な状況がある場合、特別措置の申請を行います。
精神疾患もあります。別室で少人数での受験。診断書が必要です。
娘が申請しました。ちなみに娘の病院は4,000円かかりました。
郵便局の窓口を通じて書留で行う必要があります。
受験案内の配布期間、出願の提出期限を逃さないように注意しましょう。
診断書、証明書を取る場合、1~2週間程度はかかります。
受験対策、勉強の難易度について
高認で出題されるのはごくごく一般的な内容です。
筆者の個人的感想ですが、共通テストほど厄介ではないと感じました。
大学受験に向けて勉強している人であれば特別な対策をしなくても合格できると思います。
ですが、きちんと勉強していなければ話は別です。
「高認」で検索をかけるとサジェストに「簡単すぎる」と出てきますが、油断して勉強せずにいたら必要な点数を取れずに不合格、なんてこともあり得ます。
特に理科や社会はできているつもりでも忘れていることが多くあります。
社会は変更後、範囲が広くなったので、油断せずに臨みましょう。
過去問は文科省のホームページで確認できるので事前にやっておくことがおすすめです。
(変更になった科目は注意してください)
書籍も販売されています
高認試験に特化した予備校、サポート校の高認コースもあります。
高卒認定試験予備校の一例です
- 河合塾COSMO
- トライ式高等学院
- 四谷学院
オンライン家庭教師に高卒認定試験コースもあります。
通信制高校と連携している会社もあります。
高認のスケジュール
高認試験は年間を通じて2回実施されます。
以下は令和5年度の高認試験スケジュールです。今後の参考にしてください。
第1回 | |
受験案内配布 | 令和5年4月3日~ |
出願期間 | 令和5年4月3日~5月8日 ※5月8日の消印有効 |
試験日 | 令和5年8月3日、8月4日 |
結果通知 | 令和5年8月29日発送 |
第2回 | |
受験案内配布 | 令和5年7月18日~ |
出願期間 | 令和5年7月18日~9月8日 ※9月8日の消印有効 |
試験日 | 令和5年11月4日、11月5日 |
結果通知 | 令和5年12月5日発送 |
高認についてのまとめ
・満16歳以上が受験できる
・大学や国家資格の受験資格が得られる
・年2回行われる
・しっかり対策をすれば受かる可能性は高い
大学に行きたいけれど高校に通えていなかったり、早く海外で勉強したい分野があったりという場合に高認は大いに役立ちます。
高校に通い、大学に進んで就職をする。
今の日本に深く根付いた人生のイメージに苦しめられた人もいるでしょう。
周り道をしても思いっきりジャンプをしても案外大丈夫です。
この記事がなんらかの役に立てばと思います。